017 存在しない日

目覚めて時計を見ると7時少し前。さて今日はクリスマスイブ、初めてのクリスマス合コンに行くのだ。クリスマスイブに合コンしようなんて、つまり相手がいない者同士の集まりなのだが、しんみり過ごすよりはにぎやかに過ごしたい。わくわくした気持ちで思い切り背伸びをして、いつものようにテレビをつけた。

「おはようございます。12月25日日曜日、朝7時のニュースです。」

え、今日は24日じゃないの? 耳を疑い画面を注視すると、片隅に確かに「12/25(日)」の表示。そんな馬鹿な。時期はずれの四月馬鹿か、それとも「ドッキリ」か。訳が分からなくてしばらく呆然としていた。

気を取り直してコーヒーをいれ、ひと口すすって玄関へ。ドアに差し込まれた朝刊の日付は「2005年(平成17年)12月25日 日曜日」。24日付のが溜まっていないかと再度見ても空だ。ドアの外に落ちているわけでもない。記憶違いかと新聞整理袋をのぞくと、23日付のを一番上に日付順に重なっている。

首をかしげながらパソコンでメールをチェックする。受信箱には12月25日付のが十数通。スクロールすると23日付のが数十通。24日にはメールの受信もない。ケイタイのメールも同様だ。一緒に合コンに行くはずの友人からのメールが25日付で届いていた。

「昨夜はすごく盛り上がって楽しかったよ。『お持ち帰り』した奴も何人かいたし。来なかったけど急用でも出来たのか? 残念だったな。」

どうやら僕以外の人には12月24日は普通に訪れて過ぎ去ったらしい。23日夜から連続30何時間眠っていて、メールの着信が本当に0件で、新聞は配達の人が入れ忘れたという可能性が皆無とはいえないが、そうでないとすればぼくの12月24日はどこに行ったのだろう。

翌2006年の12月23日は意識的に起きていた。日付が替わり、24日になったのを確認してから寝るつもりだった。ただ万一のことを考えて、今年のパーティーには行けたら行くと言ってあった。午前0時になり、テレビのニュースが始まった。

「日付が替わりました。ニュースをお知らせします。クリスマスイブの昨夜、各県警はいわゆる『クリスマス暴走』に備え特別警戒態勢を敷いていましたが、予想されていなかった地域で暴走行為が始まり、現在も続いています。さて、今日25日は……」

僕には12月24日が存在しない。そして12月24日には僕が存在しない。もういい。わかった。テレビを消して眠りについた。

2007年、その夏知り合った彼女とクリスマスを過ごしたいと思った。でも23日夜から25日朝までは使えない。どうしても外せない用事で田舎へ帰らなければならないという理由を作って、22日夜を一緒に過ごすことに決めた。ケイタイの電波が届かないようなすごい田舎なので、25日にこちらへ戻ったら連絡する、と伝えた。

25日朝「クリスマス冬眠」から目覚めた僕は、心地よい余韻を感じながらケイタイを取り、彼女にメールを送った。

「あの日は素晴らしい時間と素敵なプレゼントをありがとう。今帰ったところです。」

すぐ返信が来た。

「昨日偶然あなたのお友達に会いました。そのお友達は、あなたの帰省中に何度もケイタイで話したことがあると言っていました。約束を破ってメールしようとしましたが、やはり送信できませんでした。ごめんなさい。一人でいるのがたまらなかったので。でもちょっと不思議です。お友達の電波は届くのに、私のが届かないのはなぜなのでしょう。」

言い繕うたびに嘘を重ねるような気がして、うまく言い訳ができなかった。彼女と次第に疎遠になるのは当然のなりゆきだった。

12月24日が自分に存在しなくなって10年になる。記憶にあるクリスマスイブは、実家で親きょうだいと一緒に過ごしたファミリークリスマスだけだ。最近その情景がたまらなく懐かしく思える。もしかして家庭を持てば、またクリスマスイブが戻ってくるのだろうか。今度の春に見合いをして、良い人だったら秋に結婚しようか。クリスマスをはさむと、どうせまた潰れるだろうから。 

→Next
←Back
→クリスマス雑文トップ