011 Lier Xmas

「俺って、クリスマスはいつも家族と過ごすんだ。」と言った君に家族思いだと感じたのは内緒。
「いつも、誕生日とかクリスマスの前に別れちゃうんだよね。」と言った君に同情したのは内緒。
同情に押し流されて、別れて付き合ってを繰り返していた私の裏歴史はもっと内緒。
大学内や研究ゼミ内で知り合う存在もいれば、サークルで知り合う存在も、アルバイトで知り合う存在もいる。
人と人との繋がりがどこから派生するかなんて予測できないものだ。
目の前でブラックコーヒーを飲みながら、買ったばかりの煙草の封を切っている人……渉はそのどれでもなくて、
就職活動中に仲良くなった人のうちの1人だ。
偶然、同じ会社の同じグループで会社説明会を受け、偶然、研修グループも同じになった、偶然の産物の塊の関係。
歳も大学も専攻すらも違うのに、性別も何もかも超えて十年来の友人のように話す。
出身が同じせいか、もっと深くにある思考回路が似ているらしい。
そして、友人だけでよかったはずの関係は友人を超えて世間一般で言うところの後ろ指を指される関係になった。
今もこうして、私は渉に会うためだけに新幹線と飛行機を乗り継いで札幌にいる。
景色はもう、雪に囲まれて日本でも外国でもないイルミネーションがきらきらと点灯している。
地下鉄駅に貼ってあったポスターによると、クリスマスマーケットが開催されているらしい。
「蒼さんは、クリスマスの連休どうするの?何もないなら、皆を呼んで飲み会出来るんだけどな。」
マイルドタイプで頼んだコーヒーが途端に苦くなる。何の権利があってそんな事を聞くんだ。
聖夜を邪な夜に変えるかのごとく3連休になったクリスマスの予定は遠距離恋愛真っ最中の彼氏が帰ってくるものの、予定表には私と彼氏と共通の先輩との飲み会の予定が味気なく書いてある。
もっとも、そんな用事がなくても2人きりの場合は近所の焼肉屋と私の手作りケーキという
なんとも色気のないデートが待っている。
今の彼とは付き合って3年目になるが、プレゼントは私があげたことがあっても、貰ったことはない。
おそらく、彼は私が何を欲しいのか、何を買えば喜ぶのかを知らないだろう。
3年経っても、彼氏から恋愛初心者の若葉マークが剥がれる兆候は全く見られない。
「んー、彼氏と大学の先輩と飲み会だよ。日本酒でも飲んだくれているんじゃない?」
「色気ないなぁ。」
そうだよ。色気なんてちっともない。前日の天皇誕生日なんてバイト先の打ち合わせ兼飲み会の予定がもう入っている。
そうだよ。打ち合わせなんてなかったら、間違いなく私は今日みたいにデートを申し込んで渉君のところへ行くだろう。
札幌のホワイトイルミネーションのジンクスを信じて、渉と大通公園を歩きたい。
お互いの次の恋を迷信にお願いしてしまうのは私の悪い癖だ。
「まあ、仕方がないよ。私の方がバイト、だからね。」
渉の唇はいつだって柔らかくて優しい。が、私の唇はいつだって嘘つきだ。

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