最悪だった。どれくらい最悪だったかは12月24日、クリスマスイブに彼女がいるわけでもなく、一緒に馬鹿騒ぎする男友達もいない二十歳の男を思い浮かべてみればいいと思う。きっと今すぐにでも、電気コードやロープとかを用意して遺書を書き始めたくなると思う。まあ、そんな死にたくなるような孤独なクリスマスイブだった。
外にでた。町の電飾が目に痛かった。正直外に出ると見たくないものばかりがあるような気がしていたから、今日一日は引篭っておこう。と心に固く誓っていたのだけれど晩飯に食べるものが何もないという緊急事態が発生してしまったのだ。自分の住んでいるワンルームのアパートの扉を開けて、通りに向かって歩き出す。それだけでも結構試練なのだ。町を行き交うカップルを見ると世界中のラブ・ホテルに隕石とか爆弾とかイースター島のモアイとか降ってこないかなあ。と不吉なことを考えてしまう。特にモアイ。
そんなとりとめも無いことを考えながら、10分程度でコンビニに辿り着く。なんかいろいろ本来必要だった晩飯とかを買ってついつい余計なものもいろいろ買い込んでいると、話しかけられた、女に。ありえん・・・どうせキャッチセールスとかだろうなあ。クリスマスイブだからってそんなものに引っかかるほど馬鹿じゃねえ。なんて事を考えて馬鹿みたいにボーっとしていたら。「あー、もしかして私の事誰か覚えてない?」なんて事を聞いてきた。とりあえず覚えなんか無いから、
「えーと、しょ、初対面だよね?」質問を疑問形で返してみた。すると彼女はまるで外国人みたいな大げさなしぐさで、ものすごくわかりやすくガックリしました、ということをあらわした。
「覚えてないかな・・・。大学で何度もあったことあるでしょ。」
僕は正直に大学で覚えているのは教授の禿頭だけだということを告げる。彼女はまた大げさに溜め息をついて見せた。
「毎週同じ講義うけてるじゃない。君はいつも私の前の席に座ってる。」とのこと。そんなこと全然しらなかったし、あまり興味をもたなかったが、「ああ、そうなんだ。」みたいな適当な返事をするとなぜか彼女は苛立ってるみたいだった。
しばらく、彼女と話してなぜかわけのわからないまま、メルアドとか携帯の電話番号の交換まで済ませて腹が減った僕は帰ることにする。彼女にその旨を告げる意外とあっさりと「じゃあ。」みたいなことを言われて、僕は大通りを戻って家に帰ることにする。家に戻って暖房の電源を入れて、コンビニで買った缶コーヒーを飲むことにする。結局僕がもらったプレゼントは彼女のメルアドと携帯の電話番号だけだったのかもしれない。まあそれでも孤独な二十歳の青年には悪くないプレゼントかもしれない。と考えて少し、機嫌が良くなる。
晩飯を食べてから彼女に電話でもかけてみようと思った。