005 彼氏と彼氏の事情(カレカレ)

 僕、諏佐凌太は極普通の――極普通、極めてシンプルでわかり難いかもしれないけれど、そう、極普通。言葉どおり捉えてくれればいい――高校二年生である。ほんの少し変身願望があったりするけれど、いわゆるコスプレはもうオタクとかそういう言葉で括られなければならないほどの風当たりの強いものではないはずで、広義の意味ですでに若者の文化の一つだといってもいいんじゃないだろうか。少なくとも僕はそう思っている。
 僕が彼、佐伯大紀と出会ったのは中学に入ったばかりのことで、その頃はまだお互いに女よりも男に興味があって――つっても今みたいに性的なものではなくて、普通に友達として女と付き合うよりも男と友情を育むほうが好きってことで――エロ本を見たり、兄貴のAVでこっそり鑑賞会を開くときとか、女を話題にするときもそれは一つのギャングエイジ的な仲間共有の意識の元にあって、当然オナニーとかをお互いに見せ合ったのも、より深い友情を育もうとする結果であり、互いの精通を目の当たりにしたのもよくある話である。
 ――えっとよくある話だろう?
 たとえば中学三年のクリスマス。県内でも有数の進学校を受験する僕らは、当たり前のように自主合宿と称してお互いの家を泊まり合い、勉強やらなんやら、ふつーに関係を深めていた。
 ちょうど年末を迎えて僕の家族が帰省したとき、四日連続で大紀は僕の家に泊まって、まぁそのAVを鑑賞したりしていた。僕の兄貴の趣味だかどうだかよくわからないけれど、ムッチンプリンの馬鹿でかい乳をした頭の悪そうな日本人女が、筋肉質で元々肌の黒い外国人のチンコをファークッミーとか、これまた頭が悪そうな台詞を叫びながら舐めているシーンが映し出された。
「あぁー、フェラチオってどんな感じじゃろかー」
 大紀がいうので、僕は自分で咥えてみたらどうだい?というような意味を言ったら、彼はそのまま笑って、
「んじゃぁ、凌、お前、俺の咥えてみてくれんかー」
 とポロンとチンコを出した。もちろん大紀にしてみればふつーのギャグで、僕がうえーそんなことできるかーへんたいーとか言って大笑いすることを思っていたんだと思う。
 僕はまぁ、見慣れたチンコだったし、さっき一緒に風呂にも入っていたので、きれいっつーことも確認済み。まぁ、あれ、それ。なんつーか、そんなこともあって咥えてもいいかなぁとか思っていた。もちろん友情って言葉が最優先されつつも、よくわからないほどに持て余された中学生の性欲ってヤツがなかったわけでもないので、僕はフェラチオをしている女の気持ちってヤツに興味があったことも事実。そう、ここで大事なのは、僕も大紀もノンケで、普通の中学生だったってこと。そしてそのことにお互いが事実として受け止めていたということで、ここで僕が咥えようと思ったのも極普通の知的好奇心から……で、で、そのことは大紀だってわかっていた。
「ぐあッ」
 僕が大紀のものを咥えた瞬間、彼は叫んだ。全く予期しなかったといわんばかりに体を反らせ、目をみひらいたままで。

 で、発射。

 まぁ、その後は、お互いすこし気まずい思いをしたけれど、そのままちょっと進んだ友人として今に至るわけだ。
 んでも野獣のような大紀の欲望はとどまることを知らない。あれ以来、毎年のクリスマスにはちょっとずつハードルがあがってきている。困ったなぁ、と思うけれどまんざらでもない僕も相当な困り者だ。
 まぁ、今年のプレゼントは「ぼ・く(はーと)」ってことで。

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