塾帰りに街を歩くと、イルミネーションがキラキラと輝いている。それは星座の形だったりアーチの形になっていたりして、例えばカップルで歩くと気持ちが盛り上がったり、ロマンチックな雰囲気になったりするんだろうなぁと思う。でも僕はまだ小学生だから、そのへんはよく分からない。
駅のホームで帰りの電車を待つ。隣にいるカップルはマフラーをかけ合っていて、ラブラブといった感じだ。僕はマフラーを巻くのは首がむずむずして本当は苦手。でも今日はしてきて正解。すっごく寒いから。長すぎて巻き方が全然分からないからさっきからずっと格闘していた。でももうどうでもよくなって、端っこをダラっと下げたままになってるけど。
電車の中吊り広告にはサンタクロースやトナカイが踊っている。僕は今年、サンタにバットをお願いした。もしクリスマスプレゼントにバットをくれたら毎日素振りして来年にはチームのレギュラーになろうと思っているんだ。
今日の夜、サンタを見つけるために計画していることがある。夜中にカメラをセットしてサンタクロースを撮影してやるんだ。父さんにも母さんにもこの計画には協力をしてもらうことになってる。カメラの操作は昨日、兄ちゃんに教えてもらった。僕の布団の横にカメラをセットしてテープもいれて、今は録画の赤いスイッチを押すだけの状態になっている。
電車を降りると雪が降っていて、「これがホワイトクリスマスだ、すげー。」とちょっと感激した。さっきまで会ってたミキさんがクリスマスに雪がふることをホワイトクリスマスっていうんだと教えてくれた。僕はミキさんがすきだ。だから塾で授業が終わった後に、僕の気持ちを伝えた。やっぱり今日はイブだし、せっかくのイブだし、思い切って気持ちを伝えてみたんだ。ダメだったけどね。
駅のベンチに座ると、少しだけ積もった雪がおしりにしみてくる。落ちてくる雪を見上げてみる。まわりには人が一人もいない。駅も無人駅で、今日は聖なる夜で、だからみんないないのかな。
塾で使う教科書が入ったバックを横に置くと、肩が軽くなる。ニット帽をかぶりなおすと、耳があたたまる。
あとちょっとで、母ちゃんが車で迎えに来てくれる。でもなんか今日はもう少しだけ一人で座ってたい気になった。目をつむる。たぶんサンタクロースっていないんだろうなぁ。やっぱりビデオとるのやめようかな。
車のクラクションが鳴った。驚いて目をひらくと目の前で母ちゃんが車の中から合図している。
イヴなのに、いつものように迎えに来てくれる。
寒いなぁ。かばんを背負って立ち上がったら、マフラーが足に絡まった。