昔々、まだ幼稚園の頃ね。
クリスマスに親戚の家に行って、クリスマスプレゼントをもらった時に、
「これもプレゼント」
と言われて、段ボール箱をもらったわけ。
中にはぎっしりと、古ぼけた絵本。
「これがプレゼント? ていうより不要品処分ですか?」
なんてことは子どもだから別に思わなくて、絵本は大好きだったのでありがたくいただいた。
表紙も取れたような読み古された絵本の中に、絵本なのに写真?というのがあってさ。要はディズニーの実写映画の絵本化だったんだけど、そんなの知らなかったから、珍しがって最初に読み始めたのよ。
タイトルは忘れた。ストーリーもうろ覚えなんだけど、主人公の青年が『ドラえもん』のスモールライトみたいな、なんでも小さくしちゃう薬を発明するわけ。で、
「これで、普通の家具や車を縮めておもちゃにしたら、子どもたちが喜ぶぞ! クリスマスプレゼントにも最適だ!」
とか、大得意なの。
子供心に、「その方がコスト高くなるんじゃないの?」とか思わないでもなかったけど、それが本題じゃなくて。
ディズニーだから当然、発明を横取りしようとする悪役が出てきてね。主人公とその恋人をその発明品で小さくして、捕まえちゃうのよ。
で……ね。
十分の一ぐらいに縮められた主人公が、プレゼントの包装用のリボンで縛られて、ぶら下げられてるのよ。
主人公は手の平サイズだから、リボンが着物の帯ぐらいの幅になってて、それで胴体ぐるぐる巻き。おまけに蝶結び。リボンはサテンのブルーのだったってのをなぜかよく覚えてる。
そのシーンが。
その……うわあ、と思った。
それがなぜ衝撃的に感じたのか、全然わからなくて。
ただ、これって子ども向けなのにやばくね?とか思ったのを覚えてる。何がやばいのかは、やっぱりわからないんだけど、見るたびになんかドキドキするわけでさ。
子ども向けの漫画やなんかって、けっこう悪人に主人公が縛られる、なんてシーンはけっこうあったりするでしょ。でもそれを見てなんか感じたことはなかったのにね。
たぶん、ロープじゃなくてリボンだったのが、それもすごい幅広のリボンでぐるぐる巻きだったのが、なんだか「うわあ」だったのよ。
ちなみに、ヒロインの方は鳥かごに閉じこめられてました。
今思うと、それもどうかと思うんだけどね(笑)
それについては「うわあ」とか思わなかったのは、同性だったせいか、鳥かごは「違う」のか。
ところでしばらくその絵本(?)を堪能したあと、幼い私は一大決心をしたわけ。
母親の部屋の引き出しからこっそりとリボンを探し出し、自分のジェニーちゃんに、巻いてみようとしたのよ。
もちろん、子どもの手なんて不器用なもんで、悪戦苦闘してたら、母親がいきなり現れて
「なにしてるの?」
すっげぇビビッた。
「リボンを巻いてあげたいの? お母さんがやったげるわ」
何の疑念も抱かずに母親はリボンと人形を取り上げて、ウエストにきれいに巻いて後ろで蝶結びにしてくれた。
……いや、ちょっと違うんだけど。できれば両手も一緒にこう、ぐるぐるぎゅっと……
てなことは言えるはずもなくて。
リボンを結んだジェニーちゃんは意外にかわいくて、着せ飽きたドレスも華やかにリフレッシュされ、私はそれなりに満足しちゃったのだった。さすが幼児。
てなことをふと思い出して、彼氏にしゃべってみたら、
「やってみようか」
おい。
ジェニーなんかもう持ってないよ、と、とぼけてみたが、
「クリスマスイブをお楽しみに〜」とか言われてしまった。
悪いことに彼のバイト先は手芸品店だ。布地も扱ってる。
すると何か? メートル幅の裏地用を三つ折りにしたのかなんかを裸の私に巻いて蝶結びして、「プレゼントはわ・た・し」とか言わせる気か?
言わないぞ絶対。裸よりリボンより、セリフが恥ずかしいってば。
しかしあれ、あの絵本の、リボンの「ぎゅっ」とした感じに感じたもの。いったい何だったんだろう。
SMとか緊縛とかいうのとはちょっと違う気がする。どきどきするけど、もっとこう、なんか……
「彼にぎゅうっと抱きしめられる感じ」に似てるんじゃないか、と気がついたのは、イブの夜のことだった。