021 チョンマゲ

「さ、斉藤君・・・あ、あの・・・。」

しまった。予想以上に緊張した声を出してしまった。付き合いだして初めてのクリスマスなんだからちょっとは女の子らしくしよう、そう思ったのがそもそもの失敗だったのか。仕方が無い。このまま行くしかない。

「プ、プレゼントを用意しておいたの。せっかくのクリスマスだし・・・め、迷惑だったかなぁ・・・。」

消え入るような声。こんな声で喋ったのは、幼稚園の頃のお遊戯会以来だ。あの時はお腹の調子が朝から悪くて声が出なかっただけなのだけれども。

「プレゼントって・・・僕に?う、嬉しいよ。亜弥香、そんな迷惑だなんて思うわけないだろ。」
「そ、そう言ってもらえて嬉しいわ。」

嬉しいという気持ちに偽りは無かった。これにて第一段階はクリア。これより第二段階に移行する。

「こ、これがその・・・プレゼントなんだけど。」

取り出したのは古ぼけた木箱だった。立方体に近い形の、成人の頭ぐらいの大きさの。

「なんだか、古ぼけた箱だね。あ、いや、迷惑って言ってるんじゃないんだ。正直、嬉しいよ。何が入ってるんだろ。ドキドキするなぁ。」

私だってドキドキしている。

「この箱、開けてもいいかな?」
「ええ、もちろんよ。開けてみて。」
「じゃあ、開けるよ・・・え、あれ?亜弥香・・・あの・・・これって・・・。」

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五年前、祖父が他界した。

祖父が死ぬ直前、私は祖父に呼び出された。
「亜弥香、これをお前に託そう。大事にするんだ。大事に・・・。」
そう言うと、祖父はそのまま永遠の眠りについた。祖父から託されたのは古ぼけた一つの木箱だった。

祖父の葬式の後、早速その木箱を開けてみた。中に入っていたのは・・・。

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「これって・・・カツラじゃないか。しかも、チョンマゲの。」
「ええ、チョンマゲのカツラよ。斉藤君になら似合うんじゃないかと思って。」
「似合うんじゃないかって言われても・・・。」
「め、迷惑だったかな・・・。」
「そ、そんな事無いよ。嬉しい、嬉しいよ、うん。このカツラを装着すればいいんだね。」

そう言うと彼はカツラを装着した。第二段階はクリアされた。後は最終段階を残すのみ。

「あ、あれ、あれれ?このカツラ、段々とキツクなってくるんだけど・・・。」

き、きた!!

「あれ?どうなってるんだ?痛て痛てててててて。」

こ、これが・・・・。

「痛ててて、あれ?外れない。どうなってるんだ。亜弥香、外れないんだ、このカツラが・・・・」

これが・・・・呪い。

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「亜弥香、我が家には呪われたカツラがあるんだよ。もしカツラを見つけても、絶対に身に付けようなんて思ってはいけないよ。」

それが祖母の口癖だった。呪いの事を祖母に問い質したが、祖母は首を横に振るのみだった。

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呪いとは一体何なんだろう。ずっと謎だった。つい先程まで。
呪いが何なのか、それはほぼ解明されつつある。一度装着すると外れなくなる・・・それが呪いの正体だった。

彼は今、苦しんでいる。激痛に。呪いに。
さぁ、今こそ、今こそ言おう。この瞬間の為に考えていたセリフを。
今日この日の為に用意していたセリフを。

「斉藤君、大丈夫。私が何とかするわ。その呪い、きっと私が解いてみせる!!」

今日はクリスマス。奇跡はきっと起こる。

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