日本人と言うのは存外、お祭騒ぎが好きな種族のようだ。
かく言う僕も、去年まではそれなりに楽しいと思っていた。しかし、今年はどうやら僕の思惑通りにコトは運ばなかったのである。
毎年、一緒につるんでいた仲間が尽く恋人をこさえて、「今年のクリスマスは付き合えねぇわ」と僕の誘いを断ってきた。
ガッテムッ! 街の中心で怨嗟を叫んでしまうほど、憤りをどうすればいいのやら。
やっぱり、この歳になるとクリスマスはカップルのためのものという風潮があり、僕のような独り者には世知辛いというか肩身の狭い状況ではある。僕は諦め境地でその厄日をどう過ごすか漠然と考えていた。今年で学校は卒業だし、固定のバイトもしていないからどうやら、独りで酒を煽るだけというお決まりコースが容易に想像できて、一層げんなりする。このままでは本気で街の中心で怨嗟を叫んでしまいそうだ。
ちょうどその時、いつもボランティアで行っている児童福祉施設から電話が舞い込んできた。内容はクリスマスに子ども達と遊びませんか、とのこと。助け舟とはこのことである。
施設に居る子どもというのは、だいたいがそれぞれの事情を抱えて家族とは無縁の生活を送っている。だから、子どもにとって、大よそクリスマスの定番であるプレゼントとか、ケーキとかなぞは欲しても得られないという少し不憫な境遇なのだ。だから、僕が出来るコトとして、一緒に遊んで一緒に祝うことだけ。
それで、彼らの救い…とまで仰々しいことまで言わないが、ほんのひとときでもいいから、いい思い出になればいいと思う。
当日、ものの見事にホワイトクリスマスになった。
これから出向く施設は山岳平野の田舎なので絶対ここの数倍積雪しているだろう。正直、雪道を車で行軍するのは怖くて嫌だった。何故なら滑って事故を起こしそうだから。
簡単に言い切っているが、遊びに出掛けて事故を起こすというのは本末転倒だと思う。不可抗力とはいえ、休日にスノボやスキーで骨折と同じレベルなのだ。
かといってここで、今日はやっぱりキャンセルですと言う程、僕には度胸がない。電話越しで、職員さんと子ども達の嬉しそうにお誘いする声を聞いていたら、逃げるという選択肢は僕から消えていた。
覚悟を決めて、ちょっとボロいツナギを着込み、一応サンタのつもりを演出。ソリは愛車で、車内にシャベルと長靴と差し入れ用のケーキを積み込んで出発。
案の定、普通の行程なら1時間もかからない道のりが3時間も大きくロスをして到着は昼過ぎ。こっちはこっちで予想通りのどさ雪で施設は一種の半かまくら状態で埋もれていた。かろうじて入り口と前の道だけ除雪してあり、僕は偽サンタに扮した作業着もどきの格好でケーキとシャベルを抱えて挨拶をした。出迎えはもちろん子ども達。
「メリークリスマスー」
「わー、サンタさんのワリには格好がばっちぃよ」
「あはははは。ケーキは持ってきたけど、僕じゃサンタは務まらないみたいだね」
「だって、どう見たってそれ、ただの作業着じゃない。でも、何で?」
「外で遊ぶからさ。よし、ガキども、暖かい服着て庭に集合だ。雪だるま作るぞ〜」
「ええーっ!! 寒いよ」
「子どもは風の子っ! 悪い子はいねぇが〜? お部屋で引き篭もっている悪い子はいねぇが〜?」
かくして、元気な子ども達を集めて雪だるま作りを始めた。
施設ではこの時期、僕のように外へ引率する人が居ないそうで、子ども達にとって新鮮だったようだ。この雪の中、遠出をするワケじゃないから職員さんも安心。
女の子たちは雪兎のようなこじんまりしたかわいい雪だるまを。わんぱく小僧グループは僕と大きな雪だるまを。
こうして完成してみると、雪だるまの展示場みたいだ。
僕もややへこたれて、部屋に一部の子ども達と戻って休憩に入った。残りは、第二ラウンドとして、雪合戦を開始したようだ。やっぱり、子どもは元気だなぁ。
職員さんの入れてくれたコーヒーで身体を温めていると、僕を出迎えてくれた女の子が尋ねてきた。
「ねぇねぇ。プレゼントはー?」
「あー、忘れてたワケじゃないけど、ケーキだけじゃダメかい?」
「だって、みんなで分けたら、一口しかないんだよ、それじゃ少ないよ〜」
「3台分くらい買ってこればよかったなぁ。でも、僕も貧乏人なんだから無茶言わないでくれよ」
「じゃあさ、今度はお年玉を頂戴ねっ! 約束だよ」
最近の子はしっかりしてるなあ、と思った。この逆境がそうさせるのか、この娘の地なのか判然としなかったが、正月に来る機会があればね、と曖昧な口約束だけをした。
急に姪っ子が出来た雰囲気で、なんだか妙な心境だった。
結局、ケーキとおこずかいをたかられるのかメインだった気もするが、こんな微笑ましいクリスマスもアリではないだろうか。