「あのさ、ホントにこの振動、なんとかならないの?」
『ああ、なんないね。』
「なんかさ、微妙な振動が体中伝わって、胸なんか揺れちゃって変な気分。」
『お、あそこに良さげなトコ、あるけど寄って休んでく?』
「バカ」
『つかそんな胸ないだろが』
「おおきなお世話。ったく、いつまでこんなクルマ乗るんだか。」
『ああ、ずっとだよ、オレ。』
「結構困るんだけどな・・」
ナニが困るのかしらんが、この人と付き合い始めてはや・・・5年かぁ。お互いイイ歳になったよな。イベントなんかも結構やりきった感あるし、この先どうすんだろ、オレ。
「そろそろクリスマスだよね〜。」
お、きたゾ。
「クリスマスだって言うのに、新潟の人とか大変だよね。」
ああ、そっち方面の話ね。
「神様っているんならさ、なに考えてあんな災害起こすんだろ?」
『わかんないけど、なんか事情があんだろな。』
「どんな事情だよ!」
神様・・ねぇ。いるんだったらちょっと訊きたいよ、神様さんよ。オレ、この先この人とどうすりゃイイんだろ?教えて下さい。あ、オレ超鈍感だから分かり易くひとつよろしく。
『あ、そうそう、オレもうプレゼント決めたぞ。部屋でDVD観たいって言ってたろ、この前。だからPSXってすばらしいDVDプレーヤー知ってる?それにしようかと。』
え、なになに、などと聞きかえすヒマを与えず、一気に喋る。
「・・・それってさ、ゲームとかもできるヤツでしょ?ふ〜ん、自分が欲しいもの、よこすんだ〜?!」
さすが鋭い!
『い、いやいや、買うなら常にイイ物を、という愛だよ、愛。』
「どーだか。ま、いいけどね。」
ん?なんだか今日は元気がない、というか歯切れが悪い、というか投げやり、だなぁ・・・
クルマは本日の晩餐会場、最近オープンしたらしい、市内の夜景を一望できるイタリアンレストランへ到着。
「いつまで鳴ってんの?このエンジン!」
おやおや姫、ご機嫌ナナメ、どころか垂直ですかぁ?
『ターボ車だからすぐエンジン切ると悪いんだよ!というかいつものコトだろ?』
・・・殺伐とした雰囲気の中、美しい夜景と美味しい(だろう)料理、最高だね!
いざテーブルにつくと、今度はダンマリだょ。いま女の子中か?こんなにクセ悪かったっけ?
アンティパストを胃につっこみ、次にくるであろうパスタについてオレが、”ケチャップビタビタのナポリタン、出てきたりして、ギャハ!”などと空回りしていると、さっきっから”おいしー”とか”あ、そうなんだー”とか生返事しかしていない彼女の唇が、重々しく開いた。(ように見えた)
あ、こりゃひょっとして、さっきクルマの中で神様とやらにお願いした答え、来るのかな?おっし、分かり易くズバッとこい、スカッと答えてやるぜ。「もう終わりにしよう」『おぅいぇ、喜んで』・・・喜んで、はマズイか。
「あのさ、」
『うん?』
「あのね?」
『おう』
「いつ言おうか、って結構悩んだんだけどね、」
ウンウンだろうな、付き合い長いしナ。かなり寂しいけどでもホラ、前向きな別れだし、いいんじゃね?あ、くれぐれも分かり易く頼むぜ、ひとつ。
「え〜と・・」
『どした?ん?』
ここでパスタ登場。ったく間が悪い奴。残念ながらナポリタンではなく、手長海老のトマト系みたい。まず食べよう、と言って、スプーンとフォークを持ち、スプーン使うなんて男らしくないナ、などと思いスプーンをテーブルに置いたと同時に、その言葉が耳に入った。
「赤ちゃん、できちゃった・・」
パク、パクパクパク?!わっ、わかりやすすぎだろ、それはぁ・・・
え〜、神様、すごく分かり易いお答えで頂戴し、恐悦至極にございます。それでですね、え〜と、そ、それはその、オレへのクリスマスプレゼントか何かなんでしょうか?