あーあ……
僕は空を見上げ,ため息をついた.
予想はしていたが,ここまでとは.
会社を一歩出れば,そこはクリスマスの世界.
木という木に電飾が施され,窓にはサンタの絵,メリークリスマスの文字.
なんだか,街中が浮かれて見える.
そんな中を,カップル達がほろ酔いで,よりそいながら歩いている.
時計を見た.
そうか,もうそんな時間なのか.
みんな,ディナー食い終わったところか.
じゃあ,これから彼女さんを食べちゃうぞぉ,がおー,いやーん,彼氏くんのばか☆
なんて,な……
ははははは……
僕は力なく笑った.
がっくり.
この業界,毎年年末のこの時期が最繁期だなんてひどいよなぁ.とは思う.
でも,この時期に仕事がなければ,僕たちの世界は生き残れない.
おまんま食いっぱぐれてしまうのだ.
おまんま……
おまんま……
ぐぅ……
そういや,はらへったなぁ...
昼飯のコンビニおにぎりを,無理やりお茶で流し込んで以来,何も食べてないのだから当たり前か.
改めて見渡しても,やはりクリスマス一色.
近くのコンビニは,一所懸命クリスマスケーキとシャンパンを売ってるし,目の前のファーストフード店では,チキンを店頭販売してる.
そういえば,隣のチームが注文してた,宅配ピザ屋のにーちゃんも,サンタの格好してたっけ,な...
肩身が狭く思えてきた.
なんだかこの街に,僕がいてはいけないような気持ち.
って,なんでだよ!
おいおい,いつも,飲み屋でできあがっちゃってふらふらしてる,おっちゃんたちはどこにいったんだよ?
そうだ,いつもは,僕の街じゃないか!!
なんだか悔しくなってきた.
「なんだなんだお前らは! ここは俺の通勤路だぞ? 俺様のために道を開けやがれ!!」
……なーんてな.
心で叫んでもムダ.たぶん,実際に叫んでもムダムダ.
今夜のここは,もうすっかり彼らの世界であって,今に限れば,僕の居場所はここにないのだった.
「はらへった……」
小さくつぶやく.
とはいえ,ここでどこでもいいからと飲食店に入ったりなんかしたら,それこそ奴らの思うツボだ(何が思うツボなのかよくわからんがまぁいい).
だったら,とりあえず,先月手をつけずに残した1万円をおろして,アパートのそばのコンビニで酒でも買って帰ろう.
ケーキとかもまだ売ってるかもしれない.そこに飯を加えたら,そこそこの満足は得られるだろう.
そう思いながら,ATMで金をおろす.
金を財布にしまって,特に思うところなく,ふと僕は通帳の残高を確認した.
……あぁ.
なんたることだ.
忘れかけていたプレゼントがそこにはあった.
なんだ,僕のサンタさんは,そんなに身近にいたんじゃないか.
2004年12月24日金曜日.
その日は,粉雪が舞う,給料日だった.