002 少年の主張

時は12月の半ば。モテない男モテない女がかなり焦る時期だ。

ある人は言う。

「彼女なんてめんどくさいからいない方が良いんだ」

ある人は言う。

「プレゼント代がかかるだろ?その分自分に費やせばいいんだよ!」

だけど、だけど、

「俺は彼女が欲しいのだ!」

道の真ん中で叫んでやった。道行く人がこちらを振り返り、いささか哀れんだ視線を向けていた。俺はそんな哀れみを含んだ視線に、唾を吐きかけ胸を張った。

「貴ちゃんやめとけよ…」

一緒に歩いていた博が、溜息混じりに俺を静める。しかし、俺の燃えた心は納まらず、今度は博に噛みついた。

「馬鹿野郎!高校三年にもなってまだ彼女の一人も出来てないんだぞ!クリスマスが近いっていうのに!冷静でいられるかっちゅーの!」

「でもなんで貴ちゃんモテないんだろうな」

博はさも、

「貴ちゃんは喋らなければそれなりにいい顔しているのに、喋ると台無しだ」

と言うような感じで呟いた。
そこに噛みつかない俺ではない。

「なんだその言い方は!俺がまるで喋らなければそれなりにいい顔している、っていってるようじゃないか!」

「え、いや、それはちょっとよく言い過ぎだと思うけど」

「あんだとお!」

マジでキレた。こいつ、少しくらい女にモテるからって余裕ぶっこきやがって。

胸ぐらつかもうと思って、右手を伸ばしたのだが、逆に博に手首を捕まれてねじ上げられてしまった。

「いてて!やめ、やめろ!」

「もう落ち着いてよ」

実は博は柔道3段なのである。一方の俺は万年帰宅部のエース。運動なんてこれっぽっちもやったことがないので、まぁ普通にかなうわけがない。

「そういうところが駄目なんだと思うけどなぁ…」

溜息混じりに博は俺の腕をほどいた。お返しに一発げんこつで頭をなぐってやったのだが、効いていないようだ。

「くそ、腹立つ!」

「じゃあさ、貴ちゃん誰かに告りに行こうよ。そんで、彼女作ればいいじゃん」

こいつはさも、

「貴ちゃんは意気地がないから好きな女に告白できないだろうけど、何も行動しなかったら事態は何も動かないんだよ」

と言うような感じで軽く言い放った。
そこで涙しない俺ではない。

「むかつくむかつく!なんでおまえはさも、貴ちゃんは意気地がないから好きな女に告白できないだろうけど、って感じでいいやがるんだ!そうだよ!俺はそんな度胸ねーよ!小便も座ってする小心者だよ!」

「いや、そこまで言ってないけど…」

また殴ってやりたかったが、締め上げられそうなのでやめておいた。

「はぁ。絶世の美少女を彼女にしてぇなぁ…。それが駄目なら、せめて青木くらいの彼女が欲しいなぁ…」

青木とは、うちのクラスにいる美少女である。美少女なのにもかかわらず、現在フリーらしい。これは博の情報だ。

「だから告りなよ。彼女フリーだっていってるじゃん」

「馬鹿!身の程をわきまえろってーの!俺が告ったらいい笑いもんだぜ」

「そんなことないのに…」

木枯らしが吹いて、体温がやけに下がっている気がした。俺の気持ちとは正反対である。

「なぁ博。やっぱり男は音楽に詳しくないと駄目なのか?バックストリートボーイズやら、エリッククラプトンなんかを効いてないと駄目なのか?女にはどうやったらモテるんだ?教えてくれ〜」

俺は屈した。博にではない。世間の冷たい視線に屈したのだ。

彼女出来たことないの?

っていう言葉に負けたのだ。惨めだ。やるせない。でも彼女は欲しい。彼女なんていらねぇ、なんて言葉吐きたくない。なぜなら俺は男だからだ。

「うーん、僕もよく分からないんだけど…。多分、そのモテるとかモテないとかがそもそもいけないような気がするんだよね。モテるとかを気にするっていうのは、結局気が多いってことでしょ?一人の女性に限定すれば、その女性のことがよく見えてくるし、良いところも発見できると思うよ」

博はさも、

「外見とか趣味とか、そんな上辺だけのモノを人に合わせて人気を取ろうなんて浅はかでくだらないし、そんなことでモテる奴は結局顔も良いんだから貴ちゃんは太刀打ち出来ないんだよ」

とでも言うように、俺に言葉の暴力を投げかけてきた。
それで落胆するような俺では……ない。

「馬鹿!なんだよなんだよ!そんなに俺は不格好で人のご機嫌ばっかとってるヘタレでくだらないことで人気を取ろうとするような人間に見えるのか!そうだよ!その通りだよ!だってどうやって彼女作ったらいいか学校え教えてくれないんだもん!あたりめーじゃねーか、ちきしょー!」

「あ、あの、が、頑張って…」

「もう駄目だぁ…」

俺は夕日に向かって走り出した。いつの日か、サンタが俺に彼女というプレゼントをくれることを祈りながら。

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