迎賓館裏口:2006/02/06 個別記事

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2006/02/06 (Mon)

// Texts やや首を傾げてしまう東横インの騒動 //

時事の話題をリンクなしでたまに。
最近メディアで賑わってる東横インの問題だけど、要は自治体の検査後に建物の違法改築を行って障害者向けの客室を潰して経営の効率化を図ったって話と認識している。
確かに法令に違反してはいけない、ってのは間違いのないことなんだけど、そもそもなんで全てのホテルが身障者専用の客室を持つ必要があるの? と云う僕の疑問は不自然だろうか。
以下、推測で埋めている部分もあるので必ずしも正しいとは限らないのだけど、ちょっと気になって調べた結果を箇条書きしてみる。
・車椅子が通りやすいような幅の広い廊下を造った場合、事業者は増やした廊下の面積分だけ固定資産税の減免を受けられる
・段差を解消する装置の設置などに若干補助金が出る
・宿泊施設が身障者用客室を所持・維持していると云うことそのものに対する国からの補助金は出ていない。身障者の宿泊一件につき幾ら、と云う補助が出ているわけでもなさそうだ
・身障者の宿泊に際し割増し費用を要求しているわけでもない模様
(身障者割増料金って聞いたことないよね)

ざっと調べた感じでは、廊下幅の確保、大型のエレベータ、専用トイレ専用客室、etcetc……の設置維持に際して事業者が受けられる金銭的なメリットはほぼ皆無と言っていい状態のようだ。
もしかしてこう云う経費って、間接的に健常者の宿泊を含むすべての宿泊料金に含まれているんじゃないんだろうね
宿泊施設や大型デパートなどが高齢者や身障者に優しくあるのは確かに理想だ。
理想だけれど、補助金もろくに出さずに法令で縛り付けてこれを実現していると云う姿勢にはなにやら疑問を感じる。
強制じゃなしに経営方針として選択可能なぐらいの自由度はあっていいと思うんだが。
ハートビル法も結構だけど、ハートじゃ飯が食えないことだってあるでしょうよ。

2月9日補足:
氷見ちゃんブログからノーマライゼーションの理念と歴史を調べてから出直して来い。唾棄に値する。
とやや強い語調で非難を受けたのでもう少し掘り下げて出直してみた。

出直した結論だけ最初に書こう。
そもそもなんで全てのホテルが身障者専用の客室を持つ必要があるの? と云う僕の疑問に変化はない
ハートビル法については、もうすこし適用範囲や運用が緩やかでもいいんじゃないのかと思える。条例で自治体が弄れる範囲はもっと制限するとか。
以下、長くなるけど理由。

まず最初に認めなければならないのは、障害者の保護と云う部分での東横イン非難に対し僕はこれをやや擁護する気持ちを抱えている点だ。
法に反したのは悪いことだけど事業者側の気持ちもわからないではない、と云ったところか。
まあ、その一方で東横についてはあの規模のホテルチェーンが法令を守らないで経費削減ってそれはあまりにケチ臭く、非難されて当然とも思う。
(でもこれが地方の中規模旅館だったりしたらはっきりと擁護だろうな)
また、かつて接客業をしていたときに見知った障害者の多くが社会的弱者の立場をカサにきて無闇に感じが悪かったりして、僕は障害者全般に対して決して良い印象を持ってはいない。
補足より前の部分の文章についてはこうした「いけ好かない種類の障害者」に対する悪意が普段の調子よりやや強く出ているのは否めない。
僕の書き方や話の展開がこうした悪意に流されて身障者保護の視点に立つ人が嫌悪を抱くようなものになった部分については大いに反省が要るだろう。

次に認めなければならないのは、僕もまた社会から保護を受けているという事実だ。
わかりやすいところだと僕は子供を2人抱えているので、この面で制度的な保護を受けている。
自治体から交付される児童手当、子供の医療に関わる医療費の減免、保育料、義務教育にかかるお金。
これらは今のところ子供を持たない人やもう子供を育て終えた人や、そう云う人たちの納めた税金からも出ている。
繰り返すけど、僕もまたある種の社会保護を受けている身なのだ。
僕の例に限らず、誰かの収めた税金は収めたその人の利害に関わらないどこかで相互に使われているわけで、この点について僕は特に不満を持っていない。
俺の税金で社会的弱者を救済するな
とは別段思っていないし、今後もそうは思わないだろう。
そりゃ穿ちすぎだ。

さて、ノーマライゼーションの話に移ろう。
ざっと調べた結果をなるべく短く書くと、ノーマライゼーションと云うのは、
「障害者を排除するのではなく、障害を持っていても健常者と均等に当たり前に生活できるような社会こそがノーマルな社会である」という考え方に基づいてこうした社会を実現するための取り組み
の、ようなものらしい。
日本語に言い換えると「等生化」だそうな。

ではここで、極端な例を一つ提示してみる。
例えば、車椅子の人が頂上まで登れない山があるからと云う理由で国内全て山の頂上まで車椅子で移動できる通路を用意しましょう、なんて話が通るのはノーマルな社会だろうか。
(そうだ、ってことであれば妥協点は見いだせない。話はここでおしまいだ)
そりゃ無茶だ、過保護だ、となるのが妥当な考え方だろう。
逆の極端な例も考えてみよう。
道幅が足りなければ広い道だけ通ればいい、交通機関は対応しないから改造した自家用車でどこでも全部移動しなさいよ、バリアフリー? シラネ。
と、こんな社会だったらどうか。
それもまたやはりノーマルとは言えない。
例の提示方法としてやや難はあるかも知れないが、言いたいのは「この話題は過保護と妥当な保護の境界がどこにあるかと云うポイントに集約される」って事だ。
「ノーマルな社会」と云う言葉の線引きをどこにするかの問題だよね。

いよいよ本題。
では、東横インなどの宿泊施設が「すべて」障害者用の設備を整える必要があってそれは法令で強制的に実現するのが妥当なのだろうか。
僕はそうは思わない。
さきにも書いた通り、障害者用の施設がある宿泊施設とない宿泊施設とが経営判断によって混在している状態あたりがちょうどいいんじゃないかと。
ホテル事業者がその運営方針を選ぶ権利もまた尊重されるべきではないのだろうか。
経営方針として選択可能でだれも導入しなかったらどう考えるのか。
と氷見さんは仰るが、世も世だし僕はそんな極端ことにはならないだろう、と楽観している。
甘い考えと思いますか?
ではちょっと立場を変えよう。
氷見さんは事業をする側、それも東横とは異なる、さほど所帯のでかくない中小事業者の視点はお持ちになれなかったのだろうか。
改築したいけれど自治体が条例で厳しくしたハートビル法の範囲に抵触しない建築物を建てるには予算が足りず、建物の老朽化との折り合いを付けられずに廃業する事業者が出たらどう考えるのか。
そこにあった雇用は?
事業者を損なうことでどこかの地域が寂れるかもしれない可能性については?
元々仕事として成り立ちにくいところでカツカツにやってる事業者なんて山ほどいる。
(ハートビル法の適用範囲になる種類の建築物って結構多いし、自治体が条例で裁量できる範囲も存外広いんだよね)
この点、なんとかなるんじゃないの、と思っていらっしゃるのなら氷見さんは僕の楽観を甘いと嗤えはしないだろう。
そんなものは後回しでいいから障害者の権利を優先しろ、ってのも乱暴な話だ。

僕はやはり公益性が高いとはいえ、これら事業を行う私企業に一律でノーマライゼーションにかかる負担を法令で強いる行政(今回なら横浜市)の姿勢には疑問を感じる
そしてこれらの維持費は健常者も含む宿泊費に跳ね返り、客はそれと知らず過剰なノーマライゼーションとやらに半ば強制的な参加をさせられるわけだ。
こうした姿勢ってのは僕に言わせたらバランスの悪い平等で、障害者の我慢を減らす為に他の権利を強制的に制限するって姿勢はどうも受け入れがたい。
金が惜しい云々の問題ではないのだ。
税金が回り回って弱者保護の用途に使われるのはアリだけど、宿泊費にかぶる形で非選択的に払わされるのはナシ、と云う理屈は僕の中で矛盾も破綻もしていない。
結局払うんだから同じだろと仰りたいんだろうか。違うんじゃないか。

たぶん、なのだけど
・障害者ってどんな人? と云うイメージ
・障害者の過剰な保護に異を唱える健常者、或いは事業者と云う人のイメージ
・ノーマルな生活って? と云うイメージ
・正常な状態、と云うことばの認識
なんてなあたりについて僕と氷見さんとで大きな乖離があるのだろう。
ここまで書いておいてなんだが、どうもこの隔たりは妥協を見いだせるところまで埋まりそうもないような気がする。
また、既に法令化してしまったものについてここで僕がわずかばかり恨み節を唱えても詮無きことだ。
ただ僕が書いたものについてやや曲解に過ぎる非難を受けてたまたまそれを目にした結果、書いたものの背景についてちょっと言葉を増やして説明したくなったわけで。
うーん、この補足文書はなにやら賽の河原の石積みにも似ているな。

ああ、そうだ、最後にひとつささやかな意趣返しをしておこう。
そのうち氷見さんは言い出すに違いない。
社会的弱者のために健常者は全て権利も財産もなげうって奴隷化しましょう、それが正常な状態です、と。

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